スピード矯正(加速矯正)による治療期間の短縮

当院がかねてから行ってきたスピード矯正(加速矯正)が本になりました。
10 年前加速矯正に批判的だった人は多くいました。しかし、すでにシステマティックレビューを多く有しエビデンスレベルも高い加速矯正に誰も反論できなくなりました。
これは国内でしっかりとそれをやってきた歯科医師がいたからです。
私は 2005 年から「安全」「速い」「極力痛くない」をテーマに歯列矯正を行なってきましたが、アライナー矯正全盛の今こそこのテーマで矯正を行うことが大切だと考えます。

「安全」な矯正とは

歯列矯正は、病気を治したり健康を維持したりという話とは無関係です。
「病気を治す」ではなく「歯並びを直す」のです。
美容整形に似た類いのものです。
ですから、いろいろな危険性がはらんでいます。

虫歯
矯正装置を装着することによって、お口の中のお掃除がしづらくなれば、虫歯や起こるのは当然です。
歯周病
同じく、歯周病という病気もお口を不衛生にしていると始まり悪化することがあります。
歯肉退縮
歯茎が下がって歯が長く見える現症ですが、矯正で起こることのひとつです。
歯根吸収
歯根が短くなることは歯周病の悪化と同じ。早期に歯を失うことになります。
顎関節症(TMD)
歯列矯正中に顎の痛みや頭痛がでることがあります。顎関節症(TMD)です。
マウスピースでもワイヤーでも同じように起こりますが、特にマウスピース矯正で起こる印象があります。
口内炎
いろいろな種類がある口内炎ですが、矯正器具による刺激での発症はもとより、再発性のアフタを発症する人もいます。
不定愁訴
歯の矯正開始をきっかけに、不定愁訴を発症する人もいます。

歯並びが整うことは咬み合わせが変わることを意味しています。
矯正はかみ合わせを変化させることです。かみ合わせが良くなるか否かはあなたにしか判断できません。見本の模型のような歯並びになっていても、あなたにとっては全く良くないかみ合わせになるかもしれません。まっすぐ歩けなくなった、めまいがひどくなった、口が渇く、集中力がなくなった、などなど。
矯正を始めたせいで周囲には分かりづらい深刻な悩みにあなたが陥るかもしれません。

歯列矯正を吉見医科歯科クリニックでうけた方が良い理由

当院は、歯科と口腔外科、小児歯科、矯正歯科のクリニックに内科も併設しています。
口腔癌の大家である里村一人教授による口腔がん検診も毎月行い、口腔癌予防の必要性を啓発し、口腔癌による死者を一人でも減らす努力をしています。
日本では年間約 9,000 人の方が口腔癌でなくなっています。
真の歯科の医療とは何か。
開業初日から取り組んできた当院だからこそできる歯列矯正があります。
医療の側に立脚しているからできる歯列矯正があります。
そのために、やらない矯正もあります。
口腔内の病気の治療や予防なしに、歯列矯正を行うことは危険なことだと考えます。
当院はその考えの基に、安全な歯列矯正を心がけています。
できるだけ抜歯をしないこともその一つです。

「速い」

今でも 2 年から 3 年はかかると言われる歯列矯正ですが、当院のスピード矯正なら 8.5 ヶ月です。(2021 年 11 月~2023 年 12 月)これは成人の平均です。
当院のスピード矯正(加速矯正)はコルチシジョン、ピエゾシジョンという外科療法を基本に、フォトバイオモジュレーション、バイブレーションといった器具を用いることもあります。
しかし、外科手術をしたり、器具を使えば早く歯が動くというわけでは全くありません。
歯列矯正の計画を立案する際に、治療期間を短縮するためにどの様な順番でどの様に歯を動かすのが良いか、そのための処置をどう行っていくのかを考える必要があります。
それは矯正医の能力です。経験値です。
同じは並びの人がインビザラインで矯正を始めても、一方は 4 年経っても終わらない、他方は 6 ヶ月で修了、ということもあるのです。

「極力痛くない」

歯が早く動くことと、痛みが少ないことは実はセットです。
強い力で歯を動かそうとすると、歯の周囲の組織が抵抗帯ができ、痛みは増え、歯は動きません。
至適矯正力という適度な力が、実は歯をよく動かすのですが、これは歯 1 本 1 本違います。
歯によっては、極めて小さな力でも動きます。
矯正医なら誰でも知っているこの知識と、当院がもともと顎や口腔の痛みを専門とする医療機関であることが、痛くない矯正を実現しています。
歯の矯正を始める前にあなたが心配なことの一つに歯の痛みがあることでしょう。
ですから少し歯の痛みの話をします。

歯が痛い?

歯の痛みといっても、歯が原因ではないケースがあります。
これを非歯原性歯痛といいます。病名ではありませんのであしからず。
歯には原因がない痛みなのですから、いくら歯をいじっても解決しません。
「歯が痛い」と歯医者さんに言ったら、歯を削ったりつめたり、咬み合わせの調整をしたり、痛みどめをもらったり・・・。
それでもあまり良くならなかったという経験はありませんか?
あなたが痛みを感じているのが口の中でも、その原因が口の外にあるということもあるのです。
肩こりや頭痛からくる歯の痛みもありますし、口の中の神経痛もあります。
脳腫瘍や狭心症といった病気が歯痛を起こすことが、最近では健康番組でも取り上げてもらえるようになりましたから、あなたもご存じかもしれません。
当院の痛み治療は、日本口腔顔面痛学会に所属する歯科医師と医師が連携して治療しています。また必要に応じて精神科専門医とも連携しています。
迅速に顎顔面の痛みを取り除くためにそのような連携は必要です。
痛みの専門家だからできる痛みの少ない歯列矯正が、当院の特徴でもあります。

痛みの種類について

侵害受容性疼痛
タンスの角に足をぶつけていたたた・・・。切り傷、打撲、やけどなど私たちが日常生活でよく経験する痛みの主な原因です。お口の中でいうと、むし歯をこじらせた後の歯髄炎や歯根膜炎、歯周病の急性化の痛みがここに含まれます。この場合、通常の歯科治療で痛みは良くなります。
神経障害性疼痛
腰の痛みなどで「神経痛」という言葉が良くつかわれますね。
実は顔や口の中にもこの神経痛はあります。正確には神経障害性疼痛といいます。この痛みは、神経が傷つくことで起こっているため、痛い場所に傷や炎症は全く見られません。
歯を抜いた後、傷はきれいに治ったのに痛みだけ続くなどのケースや、歯の神経を抜いたのに、歯の痛みが続いているなどがこれです。この場合、当然ながら歯の治療をやり直しても痛みは変わりません。
昨今、帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛が一般的になりましたが、それらも神経障害性疼痛です。激しい痛みですが、水疱が出ないケースもあり、診断が難しいのも特徴です。
痛覚変調性疼痛
侵害受容性疼痛でも神経障害性疼痛でもないものがこれにあたります。難解な痛みですが、現代医学が追いついていないだけかもしれません。
以前は心因性疼痛とか非器質的疼痛とも言われていました。子供が学校に行きたくないために、何も原因がないのに腹痛や頭痛を訴える、といった痛みがあげられます。

これはウソをついているのではなく、本当にそこに痛みがあるのです。心理的ストレスが急に増えたために、舌や顎が痛いなどのケースで、歯科医を訪れることもあります。
このような痛みを診断できるのは、痛みに精通した歯科医だけです。当院は、痛みに詳しい精神科専門医とも連携して、難しい痛みにも対処しています。
少し古くなりますが、2013 年慶応義塾大学歯科口腔外科発表のデータによると、お口の中の痛みで来院した同大学の外来患者のうち、口の中に原因がないケースが約 10%でした。
2012 年の吉見歯科グループの平均データは約 12%でした。10%が少ないと感じるかもしれませんが、歯科医院へ来院する患者さんの半数は痛みですから、この数字はかなり多いということができます。
つまり、「歯の痛み=歯の治療」ではないケースがたくさんあるのです。当然のことですが、歯科医は歯をいじる前に、まずは痛みの原因を特定しなくてはいけません。
当院は、米国口腔顔面痛学会、日本口腔顔面痛学会のコンセンサスに基づいた治療を行っています。

写真 口腔顔面痛の診断と治療 ガイドブック 第 3 版 日本口腔顔面痛学会編
医歯薬出版株式会社
https://www.ishiyaku.co.jp/photo/44684-3.jpg